NHK委託会社(株)エヌリンクスを元社員が提訴

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訴状
令和2年11月19日
東京地方裁判所民事部御中
原告訴訟代理人弁護士
山本麻白
〒〇〇〇-〇〇〇〇
東京都〇〇区
原告
元エヌリンクス社員の氏名
〒116-0012
東京都荒川区東尾久8丁目35番12号尾久ハイム101
ホワイト法律事務所(送達場所)上記訴訟代理人弁護士山本麻白
電話0120-961-159FAX03-6632-4124
〒171-0014
東京都豊島区池袋2丁目14番8号池袋NSビル5階
被告
株式会社エヌリンクス
損害賠償等請求事件
訴訟物の価額2,680,000円
ちょう用印紙額19,000円

第1請求の趣旨
1被告は,原告に対し,金2,680,000円及びこれに対する令和2年10月4日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

第2請求の原因
1当事者
被告は,日本放送協会(以下「NHK」という。)より委託された,NHK放送受信料(以下「受信料」という。)の契約・収納業務を行う株式会社である(甲1,甲2)。原告は,令和元年6月2日,被告と労働契約を締結し,被告入社後は受信料の契約・収納業務に従事した(甲3)。中でも,NHK放送受信契約を締結した世帯(以下「契約者」という。)でかつ受信料を1年以上滞納した世帯(以下「長期滞納者」という。)を対象とする,戸別訪問による収納業務(以下「再開業務」という。)にも従事した。

2事案の概要

本件は,被告が原告を弁護士法第72条(以下「本条」という。)に違反する業務に従事させたとして,原告が,被告に対し,債務不履行(安全配慮義務違反,職場環境配慮義務違反)に基づく損害賠償請求として,金268万円及びこれに対する令和2年10月4日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

3被告の行う戸別訪問による収納業務(以下「本件業務」という)の本条違反

(ア)被告の商号には,「法律事務所」や「弁護士法人」といった文言は付されておらず,被告は「弁護士」(本条)でなく,「弁護士法人」(本条)でもない(甲1)。

(イ)「その他の一般の法律事件」(本条)再開業務については,年単位の長期滞納者を対象として繰り返し訪問を行う収納業務である(甲4)以上,法律上の権利義務に関し争いや疑義のある案件であることは多言を要しない。事実,長期滞納者に対しては,受信料の支払いを巡りNHKより多数の訴訟が提起され,それらはニュースとして報道等もされてきた。また,被告は,再開業務を含む本件業務全般にわたって,受信料の支払意思のない世帯に対し,繰り返しの訪問や「アウト返し」等を行い,受信料の支払もしくは受信料債務の承認を行わざるを得ない状況へと一定程度仕向けていた(甲4,甲5)。なお,本件業務で強引な手法が用いられやすい背景として,本件業務の成績が一定期間その水準を下回ると契約解除等を行うことを旨とする「最低進捗水準」をNHKが設けていた(甲4)。これらと相俟って,世間では,令和元年参議院議員選挙にてNHKから国民を守る党(以下「N国党」という。)が議席獲得する等,受信料に関する問題が取り沙汰され,国民の関心も非常に高い。すなわち,受信料を支払わない又は支払意思の無い世帯に関しては,支払義務や契約成立自体に争いや疑義のあることが推察される。したがって,本件業務(特に再開業務)は,法律上の権利義務に関し争いや疑義のある,「その他一般の法律事件」(本条)を扱うものである。

(ウ)「その他の法律事務」(本条)被告は,NHKより本件業務を「包括的に委託」されており,本件業務に際し一定の裁量を与えられていた(甲2,甲4)。事実,被告の戸別訪問員は,自ら下記①ないし④を訪問時その場で行っていた(甲5)。①受信料の一括払・分割払・一部支払といった支払条件の相談②支払期間指定書の記入③受信料振替口座・継続払クレジットカードの登録(支払再開の難しい契約者については,残高のない口座を登録させていたが,これについては債務承認の効果がある。)④現金の受領また,被告は,日本放送協会放送受信規約第12条の2に「放送受信契約者が放送受信料の支払いを3期分以上延滞したときは,所定の放送受信料を支払うほか,1期あたり2.0%の割合で計算した延滞利息を支払わなくてはならない。」とあるところ,長期滞納者に対して延滞利息の免除を行っている。なお,放送法第64条2項では,「協会は,あらかじめ,総務大臣の認可を受けた基準によるのでなければ,前項本文の規定により契約を締結した者から徴収する受信料を免除してはならない。」と定められている。したがって,本件業務は,弁済による受信料債権の消滅や,一部弁済・支払再開・支払期間指定書の記入・支払方法の登録等による受信料債務の承認,受信料債務の免除といった法律上の効果を発生させる事項の処理にあたると言え,上記(イ)の事情も併せ考えると,「その他の法律事務」(本条)である。(エ)債権者であるNHKと被告は別法人であるから,明らかに他人である。(オ)被告がNHKから受け取る報酬は,支払再開数,口座/クレジット登録数,収納数に応じて増加するものであり,これは本件業務と対価的関係にある報酬であるため,本件業務には「報酬を得る目的」(本条)がある(甲4)。(カ)本件業務は,被告とNHKとの業務委託契約に基づくものであり,明らかに「業」(本条)として行われている。(キ)弁護士法又は他の法律に,被告含むNHKの受託会社が法律事務を取り扱うことを特別に許可する「別段の定め」(本条)は存在しない。

4被告の安全配慮等義務違反

被告は,本件業務を含むNHKからの受託業務に関し,下記①ないし⑤の通り,国民の法律生活上の利益を害する違法行為であると同時に,従業員を危険に晒す業務であることを認識しうる状況にあった。

①NHKが戸別訪問による収納業務の外部委託を開始してから,独立行政法人国民生活センターの消費生活センターに寄せられるNHKの戸別訪問に関する相談・苦情件数は年々増加していた(甲6)。また,被告は,原告が本件業務を行った際の苦情も複数回受けている。

②過去,NHK受信料と同様,戸別訪問による収納業務が外部委託されていた国民年金に関しては,総務省資料において「保険料の納付を拒否している滞納者に対する納付の請求」は「弁護士以外の者が行うためには,弁護士法の特例が必要」と指摘されており,国民年金機構は平成29年7月13日以降,同業務の外部委託を中止した(甲7)。

③NHK受託会社の戸別訪問による契約・収納業務に関連した犯罪事案が多く知られている(甲8)。

④本件と同種・類似の事案において,多くの人間が本条違反の罪により起訴され,有罪となってきた。例示すれば,債権の取立て委任を受けてなす請求,弁済の受領,債務免除行為をなすこと,自動車損害賠償保険金の請求,受領の行為をなすこと(福岡高判昭和28年3月30日),交通事故の相手方との示談交渉をなすこと(札幌高判昭和46年11月30日),建物立退交渉・実現,地目の転用・変更手続等をなすこと(横浜地判昭和59年10月24日),建物賃貸借契約の解除及び賃借人の立退交渉をなすこと(広島高決平成4年3月6日),不動産の占有者と明渡しに関する和解交渉を行うこと(東京高判平成19年4月26日)等は全て刑事事件として起訴され,有罪である。

⑤N国党党首である立花孝志氏は,従前よりNHK受託会社の戸別訪問による契約・収納業務の本条違反を指摘したり,被告従業員を現行犯逮捕していた。また,令和2年10月5日,同氏は同業務の本条違反を理由として被告従業員を現行犯逮捕する旨も配信している(甲9)。したがって,被告は,原告をその業務に従事させるにあたり,本件業務を含むNHK受託業務の本条違反の有無について弁護士や関係機関に相談等した上で,違法な業務からは撤退等すべき義務があったにもかかわらず,被告は,違法行為であると同時に現行犯逮捕等の危険のある本件業務に原告を従事させていたのであるから,労働契約に基づく安全配慮義務違反(労働契約法第5条),職場環境配慮義務違反(労働契約法第3条4項)がある。

5損害

原告は,被告の上記行為により,以下の損害を被った。(ア)退職による逸失利益原告が本件業務の違法性・危険性を被告に指摘した際,原告の上司は「(NHKから)言われたことをやるだけ」「裁判で決まるまではわからない」等と言って取り合わず,原告は,令和2年10月4日付で被告を退職することを余儀なくされた。したがって,原告に毎月支給された賃金が24万円である(甲10)ところ,原告には,少なくとも半年間分の賃金である24万×6か月=144万円の逸失利益が生じている。(イ)慰謝料原告は,自らの行う業務が違法なものなのではないかという不安がある中,継続して本件業務に従事させられ,世間や国民からの冷やかな視線に晒された。そのような仕事に対して無力感を抱き,適法な業務で生計を立てることにより社会に奉仕したいという規範意識も傷つけられた。これらにより原告の受けた精神的苦痛は,金銭に換算すれば金100万円を下らない。(ウ)弁護士費用原告は,上記244万円を回復するため,弁護士に本訴提起を依頼せざるをえなかった。その額は24万円を下らない。

6結論

よって,原告は,被告に対し,債務不履行(民法第415条)に基づき,金268万円及びこれに対する令和2年10月4日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求め,本訴に及んだ次第である。

証拠方法1

甲1号証2甲2号証3甲3号証4甲4号証5甲5号証6甲6号証7甲7号証8甲8号証9甲9号証10甲10号

証附属書類1

訴状副本1通2甲1ないし10号証(写し)各2通3証拠説明書(原本)1通4証拠説明書(写し)1通5訴訟委任状1通

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