政府は水際対策の強化に乗り出しましたが、現場には不安の声もあります。対策の現状と課題について、国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授に聞きます。
空港で新型コロナ「陽性」が確認されたときの対応です。
オリンピック・パラリンピックで合計1万5000人の選手団について。陽性者のうち、行き先がホストタウンの人は、そのまま空港周辺などの宿泊施設に隔離。濃厚接触者については、可能性の高い人を空港検疫が調べ、検疫が用意する“濃厚接触者疑いの人のための専用バス”でホストタウンへ向かいます。陽性者のうち、行き先が選手村の場合、いったん選手村内へ移動し、その後、宿泊施設で隔離。陽性者の周辺にいた人の扱いについて、厚生労働省は「未定」としています。
(Q.こうした対応について、どう評価しますか)
濃厚接触者疑いの人を国内に入れてしまって、移動のときに接触してしまう場合があります。空港で濃厚接触者疑いと判断された場合、すぐに移動するのではなく、空港周辺のどこかの場所にとどめおくということが重要だと思います。ただ、いまのところ場所がないと思いますが、今からホテルなどを確保して、そういう体制が取れるようにしておくことが大事だと思います。
5万3000人の大会関係者から空港検疫で「陽性」と判定された人が出た場合。陽性と判定された人は、空港検疫が用意した宿泊施設へ隔離します。一方、陽性者以外は全員、濃厚接触者の可能性を調べずに、宿泊先のホテルへ移動。ホテルの部屋に待機し、保健所が濃厚接触者を判断します。
(Q.この対策は、どう評価しますか)
大会関係者のほうが、問題が大きいと思います。濃厚接触者という判断もせず、ホテルに移動するということですが、ホテルは、そういう人たちを管理する場所ではないので、管理ができるかどうかという問題があります。さらに、ホテルに移動した後、各自治体が、さまざまなホテルに宿泊している人たちの確認をしていくのは、手間がかかります。また、大会関係者は行動範囲が広くなってきます。そういうことを考えますと、もう少し対策を講じる必要があると思います。
(Q.濃厚接触者を調べず、ホテルに移動すれば、一般の人と接触するリスクはありますね)
ルールブックがありますので、ちゃんと理解を示して、行動を対応してくれる人が多くいると思います。しかし、なかにはルールを守ってくれない人も出てくるかもしれません。そういう人との接触はやむを得ず発生してしまうかもしれません。
東京都の25日の感染者数は562人。6日連続で、前の週の同じ曜日を上回りました。厚生労働省の専門家組織の会合に示された予測ですが、オリンピックによる人流の増加がないという控えめな予測でも、インド型の影響が大きければ、7月に急上昇。インド型の影響が小さくても、8月には1000人超となっています。
(Q.この予測についてどうご覧になりますか)
現時点で上昇傾向が認められますので、リバウンドは起こると思います。これからインド型の影響もあります。そして、オリンピック、夏休みと感染者数が増加しやすい要因が重なってしまいます。私は、予測グラフの「影響大」と「影響小」の中間くらいで、感染者が増えていくと思います。いずれにしても、決して油断はできず、かなり厳しい状況になるのではないかと思います。
(Q.今後はどういう対策が望ましいとお考えですか)
これは難しいと思います。まん延防止等重点措置に移行して、まだ1週間しか経っていません。この状況のなかで感染者が増えてきていますので、まん延防止の有効性は期待できません。では、緊急事態宣言に戻せるのかというと、これも難しいと思います。オリンピックを見据えるのであれば、無観客ということは考えなければいけません。それなら、早めに決断して、そういう体制のシミュレーションしていくことが大事だと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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