世界でも無類の親日国「タイ」。今、日本以上に日本らしさを求める“ガチニッポン”ブームが巻き起こっているとか!?
原宿に江戸、日本の街を再現した施設も続々オープン。そんなタイ人の“日本愛”が、日本の苦境業界の希望の光にも!そのワケを追跡しました。
■コロナ禍で生まれた“ニッポンロス”
巨大なちょうちんが目を引く、日本の江戸時代の街並みを模したという施設。朝から多くのタイ人客が集まってきています。
タイ東部。大きなちょうちんと、その先につながる商店が、どこか東京・浅草を思わせる商業施設「Jパーク」。日本庭園を抜けると、まるで金閣寺のような建物もあります。
9年前に誕生したこの場所が、ここにきて急速ににぎわい始めたのは「ある理由」がありました。
Jパーク 支配人:「タイ人はコロナの時に日本に行けないから恋しかった。“日本に行けないからココに来て”と宣伝したらお客が殺到した」
コロナ禍によってタイで生まれたという“ニッポンロス”。確かに、タイ国内には今、日本を体感できる施設が次々にオープンしていました。
■江戸時代の街並み再現「原宿タイランド」
コロナ禍真っ只なかの2021年にオープンした日本風テーマパーク「原宿タイランド」。この日は、60名近いミャンマーからの団体ツアー客の姿がありました。
タイの旅行会社:「ここは新しくオープンした人気施設だからお客を連れてきた。日本に遊びに来た感じになる」
日本の江戸時代の街並みを再現した園内は、東京ドーム4つ分の広さ。
タイ人来園者:「まるで侍映画のような雰囲気だよ」
インスタ映えがとにかく大好きなタイ人。日本に行ったつもりになれると評判の、撮影スポットなんです。それにしても、なぜパークの名前を“原宿”としたのか…?
ヒントはエントランスにありました。建て替えで今はもうなくなった原宿の旧駅舎をイメージした外観。若者たちが集まる場所になってほしいという願いが込められています。
タイ人来園者:「(Q.日本に来た気分になりますか?)ハイ!もちろんです!」
■日本の“飲み屋街”をモチーフに…
一方、少し変わった“ガチニッポン”体験ができるのがコロナ禍がきっかけでオープンした一角。手掛けたのは、自称「日本かぶれ」のラーメン店店主のビーさん(36)。
ビーさん:「子どもの時から日本が大好きで毎年行ってた。でもコロナが長引いて、すごく日本が恋しくなった」
元々、旅行関係の仕事をしていたビーさん。しかし、コロナで仕事がストップ。しかも募る日本への想い…。そこで「日本に行けないならタイに日本を作ってしまおう」とオープンしたお店だったんです。
タイ人来店客:「まるで日本の屋台みたい!」
日本の飲み屋街をモチーフに2年前にオープンした「ノミスケラーメン」。お店は「駅の看板」や、日本の「自動販売機」「工事中の貼り紙」など、どこかで見た日本の街並みを少しづつミックス再現。
なかでもこだわったのは「信号機」。なんと、日本からわざわざ取り寄せた払い下げ品です。
こだわったのは見た目だけではありません。
ビーさん:「見た目だけじゃなくて“音”でも日本を感じてほしい」
「歩行者専用ボタン」を押すと、日本に来たことのある人なら必ず通じる音。まさにリアル来日体験が、タイ人たちに人気なんです。
タイ人来店客:「まるで日本にいるみたい!」
■「毎日完売」 “石焼き芋”が大ヒット!
街並みだけではありません。「昔ながらのアノ食べ物」が、なぜか今大ヒット。そう「石焼き芋」。
タイ人来店客:「オイシイ!!」
甘さやねっとり食感が大人気に。
タイの焼き芋店 店主:「ほぼ毎日、閉店までもたずに完売しちゃう」
ドン・キホーテの運営会社がブームの火付け役です。
繊維も豊富で腹持ちも良いため、ダイエット食としても注目。日本からタイへのサツマイモ輸出高は、この6年間でなんと8倍になりました。
■輸出増加率が40%↑ 「緑茶」が人気
そんななか、同様に今タイへの輸出高を飛躍的に伸ばしているのが「緑茶」です。去年、輸出増加率が前年比およそ40%アップ。
健康志向の高まりもあり、タイでは今、日本顔負けの本格「抹茶」を提供する店が増えているんです。
タイの抹茶店 店主:「この店のお茶はすべて自分で日本に行って選びました。全部、日本からの輸入品です」
■ユニークなメニューで人気「抹茶カフェ」
こちらはちょっとユニークな抹茶メニューを提供しています。カツオだしをゼリーにして玄米をのせた“お茶漬け”をイメージした抹茶ドリンク。
さらに、トーストにカスタードを混ぜた抹茶クリームを流し込み、アイスをのせて、さらに抹茶の粉末をかけた、抹茶尽くしのトーストスイーツ。斬新なメニューを楽しみにしている常連客も。
タイ人常連客:「オイシイです!」
夫婦で切り盛りする抹茶カフェ「タヌキ261」。オープンのきっかけは、コロナ禍中に、友人たちに抹茶をふるまったことでした。
タヌキ261 妻 モッドさん(32):「夫がコーヒー好きの友達に抹茶をいれてあげたら“お店やりなよ”といわれるほど評判が良かったんです」
当初は、自宅で作った抹茶をデリバリー。すると瞬く間に人気となり、去年4月、この場所で店をオープンしたんです。味もさることながら、夫婦の人柄も人気に。
タイ人常連客:「キャラが可愛いんですよ」
日本大好き。ちょっとぽっちゃり体型の夫・メイさん(33)。ニックネームが…。
メイさん:「メイタヌキです」
そう、タヌキ似のメイさんが、店名の由来だったんです。
こちらは妻のモッドさん。
モッドさん:「絵を描くことが好きなので、店の物のデザインは全部自分でやってます」
日本の漫画にハマり、大学ではイラストを学んだといいます。店にあるタヌキのイラストは、すべてモッドさん作。
そこで、腕前を見せてもらうことに。すると、そこには抹茶タヌキのイラストとともに「ありがとう」の文字が。
モッドさん:「テレビ朝日が来てくれてとても感謝してます。日本のテレビ局に取材してもらうことが夢だった」
日本から取材に訪れた番組スタッフへの、感謝の気持ちでした。
スタッフ:「Thank you very much!」
モッドさん:「コップンカー(どういたしまして)」
ニッポン愛にあふれた、すてきな抹茶店でした。
■日本製の「高級食器」がこだわり 高級和食店が続々オープン
日本食へのこだわりは、こんな展開もみせています。“オマカセ”コースを売りにする、高級和食店が続々オープン。その日の旬のメニューを料理人が考案する、日本でもお馴染みのスタイルです。
タイ人 オマカセ店来店客:「職人が何を作ってくれるか分からないのでワクワクする」
今、タイでブームとなっている高級和食店の「オマカセ」コース。こちらの店では、1人あたりの料金が、タイ人の平均月収の半分以上、およそ6万円。
店のオーナーが、食材同様にこだわっているのが日本製の「高級食器」。
オマカセ店「メルト」オーナー:「お客さんが色々楽しめるように“日本の食器”にこだわっている」
日本の高級店に負けじとメニューごとにすべての食器を変えることで、味だけでなく見た目も飽きさせない工夫をしているんです。
■日本の食器業界に“希望の光”
タイのオマカセブーム到来で、日本の「食器業界」に希望の光が。
岐阜県土岐市にある、食器の販売会社「みのはん」。タイのオマカセ店からの注文が殺到しているといいます。
食器販売会社「みのはん」 岩原崇会長:「今、新しい店をオープンする人は、非常に高価格の店を出すからいい皿を買う。単価の高い食器を買われる」
現在、こちらの会社のタイでの売り上げは年間7000万円。その一方…。
岩原会長:「国内はもう“値段競争”でみんな消耗した。全盛期に比べると4分の1ほどになりました。メーカー数も売る人も。そのくらい“斜陽化”しちゃってる」
■「葛飾北斎」の絵柄の皿 海外からの発注が急増
同様のピンチを、タイへの輸出で切り抜けようとしているのが、同じ土岐市の老舗食器メーカー「昭和製陶」。創業およそ100年、最盛期には250人ほどいた職人は、現在では4分の1に。
食器メーカー「昭和製陶」 加藤源一郎社長:「物づくりというのは、いっぺん途絶えたら修復するのが難しい」
そこで社長が起死回生の一手に出ました。それが「葛飾北斎」の絵柄がモチーフのお皿の開発。「ジャパンブルー」と呼ばれる再現が難しい深い青色も、特殊な印刷機を使って再現しました。
すると、なんと海外からの発注が急増。実はあの超高級オマカセ店でも、寿司の見せ皿として使用されているんです。
このお皿の売り上げは、輸出前のなんと2倍になりました。
加藤社長:「前はお皿だけだったんですけど、(同じデザインを)色んな形状やサイズのものに展開し始めた。非常にうれしい」
日本愛が詰まったタイの“ガチニッポン”ブームが、海を越えて日本を助けてくれるかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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