軍事ジャーナリスト田岡俊次が語る裏切りの同盟関係史。日本人は武士に二言はない、「裏切るくらいならともに亡びる」美学があるようですが、世界はそんなに甘くない。日本は今、アメリカにすべてを捧げる「同盟の深化」に躍起となりそれを誇っていますが、そんなんでいいのでしょうか。アジアにおける中国包囲網、日米だけでなく豪と印も仲間になってと宣伝していますが、インドは上手に距離を測りそうそう一蓮托生にはなりません。台湾有事をあおって、台湾との関係強化といって喜ばれているのかと思いきや、台湾だってしたたかな戦略家。肝心の台湾海峡両岸貿易、中国との貿易投資人流を抑制する気配はありません。思い起こせば、日本は、戦前から、日英同盟に捨てられ、ヒットラーと日独防共協定を結んだのに、ヒットラーはソ連と相互不可侵条約を結び、日本も日ソ中立条約を結んで1945年6月の段階でもソ連に仲介を求めるほど頼り切っていましたが、当然のことながら、ソ連はヤルタ協定での連合国側との約束に従って参戦してきました。米中しかり。蒋介石を押していたはずの米国は、冷戦時のソ連を抑えるために対立していた中国共産党に力を貸し、台湾を見捨てて中国の国連加盟を認め国交正常化し、共同戦線をつくりました。ベトナム戦争でも、北ベトナムを抑えるために北の背後から中国に圧力をかけさせ、911以降、テロとの戦いのために、ウイグル族イスラム過激派の掃討を中国に依頼していました。ことほど左様に、国際政治は「複雑怪奇」で不可解に見えて、実は冷徹な国益優先と思えば極めて明快です。日本が米国にすり寄ってトレンドに見える「中国包囲網」に勇んで参加し、台湾有事に自ら巻き込まれようとしてる昨今の単細胞思考に田岡さんは警鐘を鳴らします。
収録は、2021年6月29日
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