極寒の裸祭り…奇祭「蘇民祭」 1000年の歴史に幕 背景に担い手の高齢化や後継者不足【羽鳥慎一モーニングショー】(2024年2月21日)

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 岩手県奥州市で、今年最後となる「蘇民祭」が行われました。担い手の高齢化や後継者不足を理由に、1000年以上続く歴史に幕が下ろされました。

■「裸参り」に約520人が参加 50年間で最多

 暗闇に響き渡る掛け声。灯りを手に、ふんどし姿の男たちが行列をつくります。

 岩手県奥州市で1000年以上続く奇祭「黒石寺蘇民祭」です。

 気合の掛け声とともに、裸の男が次々と極寒の川へ入っていきます。祭りの中の「裸参り」といい、頭から冷水をかぶって身を清め、境内を回りながら「五穀豊穣」や「疫病退散」を祈ります。

 「ジャッソー」という独特な掛け声は「邪を正す」という意味で、裸になるのは「神仏の前では隠し事をしない」証しだといいます。

 国の無形文化財にも指定されていますが、今年で1000年もの長い歴史に幕を下ろします。その理由が、担い手の高齢化です。

 1999年の蘇民祭の様子です。伝統を受け継いだ黒石寺の檀家(だんか)が厳しいしきたりのなか、祭りの準備を進める様子が捉えられています。

檀家の男性
「精進していない人の家で火を使って食べたり飲んだり、一緒に温まることさえもダメですよ。こたつに入ってとかも。だから結局、遊びに行けないわけですよね」

 非公開の儀式など、祭りの中心を担う檀家の高齢化により、これまでの形を維持できなくなってきたのだといいます。

千葉から来た見物客
「1000年も続く祭りが終わっちゃうのは、ちょっと悲しいなって思いますし」

市内から来た親子
「一度も見に来たことがなかったので、こうやって大っぴらにやるのは最後と聞いたので見に来ました」

 全国からおよそ7000人が訪れ、「裸参り」には、この50年間で最多のおよそ520人が参加しました。

■来年から祭りなし「命がある限り関わりたかった」

 水で身を清める参加者に指示を出すのは、佐々木光仁さん(61)。蘇民祭を取り仕切る役目を務めます。

 祭りに20年、関わってきた佐々木さんには複雑な思いがありました。

佐々木さん
「これだけ続いてきた歴史を縮小するならしょうがないかなって部分はあるんだけども、最後ってまだ信じられないですね」

 2010年には、蘇民祭のポスターに選ばれたこともある佐々木さん。来年からは祭りは行われず、儀式などで信仰は継続されますが…。

佐々木さん
「『水かぶりだけ残そうよ』とか、何かしらの方法がなかったのかな、という気持ちは本音ですね、自分の。(蘇民祭は)自分にとっては本当に大切なもの。命がある限り関わっていきたい祭りの一つだった」

■ポスターで物議も…モデル男性「必ず復活」

 番組は、これまで幾度となく蘇民祭を取材してきました。

 2008年には、祭りのポスターに「不快感を覚える利用客がいる」として、JR東日本が掲示を拒否するなど、物議を醸したこともありました。

 そのポスターのモデルとなった男性が、“最後の蘇民祭”を前に、取材に応じてくれました。

2008年ポスターのモデル 佐藤真治さん(53)
「とりあえずあの時は、変な自己満足かもしれないけど、(自分の写真が)ポスターになった、良くても悪くても広まった。祭りの存在価値は広がった。そのうち皆が集まって本当にやる気があれば、5年後、10年後に必ず“蘇る民の祭り”が蘇民祭ですから。俺は必ず復活すると思ってるから」

■極寒の裸参り 番組リポーターも参加

 17日午後6時前、黒石寺蘇民祭の裸参りがいよいよ始まります。服を脱ぎ捨て、齋藤寿幸リポーターも伝統の奇祭に参加します。

 男衆に囲まれながら、本堂から100メートル離れた川へと向かいます。

齋藤リポーター
「ジャッソー!!もう叫んでないと寒い」

 大行列の中を進む齋藤リポーター。そして、水浴びの順番が回ってきます。

齋藤リポーター
「(水かぶって)うおぉ~!!」
「(水から出てきて…)めちゃくちゃ冷たいですけど…清められました」

 「裸参り」では、これを3回、繰り返します。ただ、あまりの寒さに…。

齋藤リポーター
「無理…(ベンチコートを着る)。すごい祭りだ」

他の参加者は…。

初参加
「寒いっすね、あははは。寒いけど気持ちいいですね」

十数回参加
「(Q.寒くないですか?)いや、普段の年より暖かかったですね。3週目の最後は、本当は(水をかぶるのは)3回だけだったんですけど、自分の気持ちの整理として9回。もうこれで最後だなってことで」

 参加者の数が多く、渋滞も起きました。スケジュール管理のため、佐々木さんの指示にも力が入ります。

■五穀豊穣が約束「蘇民袋」 男たちの争奪戦

 午後7時半、住職が姿を現し、「蘇民袋」を本堂に運び込みます。

 袋を手にした者に「五穀豊穣」が約束されると言われ、男たちが奪い合います。

 多くの参加者で、本堂の前は隙間なく埋め尽くされます。

 午後10時、蘇民袋を持った人が現れ、争奪戦がスタートします。裸の男たちは苦悶の表情を浮かべ、「蘇民袋」を奪い合います。

 群衆の上に飛び乗り、袋に手を伸ばす猛者もいました。人波に揉まれ、完全に足が浮いてしまっています。

 争奪戦の中心は、渦を描くように右へ左へ揺れ動き、遂には、本堂の外へ。

審判
「終わりだ!終わり!」

 争奪戦開始から1時間、黄色い手ぬぐいを巻いた審判役が白熱の戦いを止めに入ります。

 決着がつき、1000年以上の歴史を持つ蘇民祭、蘇民袋争奪戦が終了しました。

 終了まで袋をつかみ続けていた人は「取主」と呼ばれ、「五穀豊穣の地」が約束されるといいます。

佐々木さん
「この町のかなり長い歴史を、祭り中止の年も、自分の中で神と向き合っている部分は中止だろうと何だろうと、ここに来て手を合わせている。みんなが納得する形で、もっともっとつないでいきたい」

 惜しまれながらも、1000年の歴史に幕が下ろされました。

黒石寺 藤波大吾住職
「黒石寺蘇民祭は今年きょうをもって終了となります。この祭りを好きでいてくださって集まってくださる方々、思いを寄せてくださったすべての皆さんに本当に感謝の気持ちです。ありがとうございます」

(「羽鳥慎一モーニングショー」2024年2月19日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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