「利益読めないリスクある」製造ライン増やせない?インフル流行で“薬不足”深刻に (2023年9月29日)

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ANN
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9月としては異例の流行が続いているインフルエンザ。処方せんを受け付けている薬局では、咳止めなどの薬が不足し、対応に追われています。

千葉県内の調剤薬局。薬の棚を見ると、いくつも空の棚がある状況です。

風邪の症状を訴える夫婦には、処方せんを出した医師に確認したうえで、解熱剤を違う薬に変え、さらに、たんを出しやすくする薬は出さないという対応をすることになりました。

こんな状況も起こっています。
血圧を抑える薬の処方せんを持ってきた黒瀬憲彦さん(76)。在庫が全くなく、処方せんを受け付けることができませんでした。こうなると他をあたるしかありません。
黒瀬憲彦さん:「(Q.電車で他の薬局に行ったことも)ありますよ」

黒瀬さんは、次に訪れた薬局で薬を受け取ることができました。
黒瀬憲彦さん:「(Q.最初の薬局でなくて移動はこれまでにも)3カ月続けてです。死ぬまで飲まなきゃいけない薬ですから、なかったら大変ですから、あちこち探さないといけない」

こんな状況が2~3年続いています。さらに、薬不足の状況は、日を追うごとに悪くなっていると感じているそうです。
うさぎ薬局馬込沢店管理薬剤師・中村仁栄さん:「薬局としては、もうあるものを出していくしかないんですけれども、結局、最終的な苦労をかけるのが患者さんなので、ちょっとそこのケアがしきれないのが、悔しくてしょうがないですね」

さらに、これから先も品薄に拍車がかかる懸念があります。インフルエンザの季節外れの流行。そして、この先に待つ本格的なシーズンの到来です。

インフルエンザの患者数が去年は、ほぼゼロに近かったこの時期ですが、今月24日までの1週間で、インフルエンザの患者数が、1医療機関あたり『7.09人』と発表されました。学級閉鎖といった措置を取る学校などは1569施設ありました。

こうした事態に厚生労働省は、医療機関などに対し、新たに協力要請を行うことを明らかにしました。
武見敬三厚生労働大臣:「需給がひっ迫している鎮咳薬(せき止め薬)・去痰薬(たん切り薬)については、初期のころからの“長期に至る処方”を控え、医師が必要と判断した“最小日数での処方”に努めていただくことをお願いいたします」

そもそも、薬不足の発端は3年前にさかのぼります。ジェネリック医薬品メーカーの『小林化工』が製造した水虫の治療薬に、睡眠導入剤が混入していたことが始まりでした。

その後、各社の自主点検などで、製造工程で不正が横行していたことが続々と発覚。今も、生産量が回復していないメーカーがあることが、ジェネリックを中心に薬不足が続いている一因です。

先月時点で、ジェネリックのなかで供給停止の薬は1112品目。数量を限るなど限定出荷が1816品目と、3分の1ほどの医薬品に今も影響が出ています。

こうした現状に医薬品メーカーは製造量を増やそうとしていますが、すぐには供給不足を解消できない事情があるといいます。

ジェネリック医薬品大手の『東和薬品』では、薬不足が始まったころから、増産や設備投資を行ってきました。
東和薬品・菅野隆行山形総工場長:「我々ジェネリックメーカーとしては、安定供給に対する責任は、より一層深まっていると認識」

一部で24時間態勢の稼働を続けても追いつきません。そのため、現在、製造する776品目の薬のうち、その3分の1は、限定出荷としています。
東和薬品・菅野隆行山形総工場長:「一つの設備で数十品目の製品を作っていますので、一つの製剤を変更することで、他の製品にも影響することがある。なかなか生産計画を変えるのが容易ではない」

今年の秋に完成する新しい工場がフル稼働すれば、年間、35億錠分の増産が可能になります。しかし、こう話します。
東和薬品・菅野隆行山形総工場長:「不安定供給の状況が いつ解消するか明確にお答えすることは難しいんですけれども、2、3年をかけてフル製造に持っていくことを計画している」

※医薬品の政策に詳しい神奈川県立保健福祉大学の坂巻弘之教授に聞きました。

薬不足の背景について、坂巻教授は「メーカーの不祥事による“ジェネリック医薬品”の不足。さらに、新型コロナの急拡大で、咳止め薬やたん切りの薬、解熱剤などが大量に消費され、薬不足に追い打ちをかけた」としています。

2021年に業務停止処分を受けたジェネリック大手の『日医工』もたん切りの薬を製造していましたが、その一部は現在も出荷停止になっています。

“ジェネリック医薬品”は、先発薬より価格が5割以上安いので、国が医療費を抑えるために使用を進めてきました。その結果、医療現場で多くのジェネリック医薬品が使われるようになり、最新のデータでは、8割近くのシェアを占めています。

業務停止を受けなかったメーカーが、製造ラインを増やすことはできないのでしょうか。
坂巻教授は「新しい製造ラインを作るとなれば、設備投資が必要。その製造ラインを都道府県がチェックするため、薬の製造までに半年から2~3年かかる。利益が読めないリスクもあるため、メーカーは避ける」と話します。

今後の改善策について、坂巻教授は「今も一部のメーカーでは品質の問題が改善されていない。それに対して、早期に具体的な改善策を出すべき。加えて、製造ラインが不足しているなどの問題については、設備投資を支援するなど、国が積極的に関わる必要がある」と話します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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